連絡定期券は、複数路線を使用して乗り換えが発生する定期区間でも、一枚の定期券にまとめることができる優れものです。
特にIC定期券の二枚持ちは、乗り換え時に自動改札機の読み取り不良につながることが多く、一枚のIC定期券で発行できれば自動改札をスムーズに通過できます。
一枚のIC定期券で発行できる買い方と、残念ながら二枚の定期券になってしまう買い方を詳しく解説します。
ここでは、首都圏のSUICA/PASMO、中京圏のTOICA/manaca、関西圏のICOCAについて触れます。
はじめに知っておいてほしいこと
連絡定期券を買った場合、定期券の継続や払戻しは購入した鉄道会社でしかできないとする会社は少なくありません。
自宅の最寄り駅の鉄道会社と通勤先や通学先の鉄道会社が異なる場合は、継続や払戻しの際に注意が必要です。
また、本記事では扱いませんが、磁気定期券なら購入できる連絡定期区間もあります。詳しくは駅でご確認ください。
首都圏のSUICA/PASMO定期券
首都圏はJR東日本系のSUICAと、私鉄・地下鉄が加盟するPASMOに分かれています。
発駅がJR東日本のSUICA対応駅の場合、一枚の連絡定期にできるのは主に以下の複数路線組み合わせの場合です。
- JR東日本-(乗り換え)-私鉄・地下鉄
- JR東日本-(乗り換え)-私鉄・地下鉄1-(乗り換え)-私鉄・地下鉄2
- JR東日本-(乗り換え)-私鉄・地下鉄-(乗り換え)-JR東日本
- JR東日本-(乗り換え)-私鉄・地下鉄1-(乗り換え)-JR東日本-(乗り換え)-私鉄・地下鉄2
一方、発駅が私鉄・地下鉄のPASMO対応駅の場合、一枚の連絡定期にできるのは主に以下の複数路線組み合わせの場合です。
- 私鉄・地下鉄1-(乗り換え)-私鉄・地下鉄2-(乗り換え)-私鉄・地下鉄3 ・・・
- 私鉄・地下鉄-(乗り換え)-JR東日本
- 私鉄・地下鉄1-(乗り換え)-JR東日本-(乗り換え)-私鉄・地下鉄2
どのようなルートでも認められるわけではありません。
鉄道会社はそれぞれ連絡する鉄道会社線の乗換駅を指定しており、その制約の中で着駅までつながること、
しかも関連する鉄道会社間で連絡運輸契約を結んでいて、発駅で支払いを受けた費用を各社に割り振り精算ができる場合のみです。
一つの例として、4社を乗り継ぐルートを挙げましょう。
- 京浜急行電鉄で横浜以南の駅、例えば「上大岡」駅から乗車し、小田急電鉄の「登戸」駅で降車します。
- (1)京浜急行電鉄は、(2)東急電鉄に横浜駅で連絡します。
- その先、(2)東急電鉄の渋谷駅を経由する場合のみ、(3)京王電鉄井の頭線への連絡が認められています。
- 更に、このルートで(3)京王電鉄井の頭線の下北沢駅を経由する場合のみ、(4)小田急電鉄への連絡が認められています。
つまり、京浜急行電鉄(本線)の上大岡駅→東急電鉄(東横線)→京王電鉄(井の頭線)→小田急電鉄(小田原線)の登戸駅、という鉄道会社を4社乗り継ぐ一枚のIC連絡定期券を購入できます。
一方、横浜駅でJR東日本に乗り換え、JR東海道線ーJR南武線と乗り継いでJR東日本の登戸駅へ連絡するルートも購入できます。
要は、鉄道会社がどこまで乗り継ぎを認めているかです。最短経路として妥当でない乗車ルートは、もともと発売の範囲から省かれています。
鉄道会社が指定した乗り換え駅を使えないルートでは、定期券が二枚以上に分かれてしまいます。
中京圏のTOICA/manaca/ICOCA定期券
中京圏はJR東海系のTOICAと、名鉄、名古屋市営地下鉄他が加盟するmanaca、関西私鉄の近鉄が加盟するICOCAに分かれています。
発駅がJR東海のTOICA対応駅の場合、一枚の連絡定期にできるのは主に以下の複数路線組み合わせの場合です。
- JR東海-(乗り換え)-manacaエリア(名鉄・名古屋市営地下鉄など)
- JR東海-(乗り換え)-近鉄ICOCAエリア(伊勢中川駅まで)
一方、発駅が名鉄・名古屋市営地下鉄のmanaca対応駅の場合、一枚の連絡定期にできるのは主に以下の複数路線組み合わせの場合です。
- 名鉄-(乗り換え)-名古屋市営地下鉄
- 名古屋市営地下鉄-(乗り換え)-名鉄
- 名鉄・名古屋市営地下鉄-(乗り換え)-JR東海
近鉄の名古屋線・山田線等と、名鉄のmanacaエリアの連絡定期券も発売されています。
一方、近鉄と名古屋市営地下鉄は連絡定期券の設定がありません。名古屋駅で乗り換え可能でも、この組み合わせを使ったルートの場合、定期券が二枚以上に分かれてしまいます。
関西圏のICOCA定期券
関西圏はJR西日本系のICOCAのみ(※)が、JR西日本、関西大手私鉄(阪急、阪神、近鉄、京阪、南海)、大阪メトロ、京都市営地下鉄で使われています。
※ポストペイ型ICカードのPiTaPaは除く
ただし、どの鉄道会社もICOCAを扱っているので、どんな路線の組み合わせでも一枚のIC連絡定期券にできる、という誤解をしがちです。
関西圏は、首都圏鉄道会社と異なっており
- 鉄道会社同士の相互直通運転が少ない。特に地下鉄と、大手私鉄やJRとの直通運転が少ない。
- JR、大手私鉄のターミナル駅が分散していて、鉄道会社同士の直接的なターミナル駅接続が少ない。
このような背景もあり、たとえ路線上は乗り継ぎで繋がることができても、連絡定期を発売しないルートはいくつもあります。
また、私鉄1-JR西日本-私鉄2のように、発着が私鉄で間にJRが挟まる連絡経路があまり許可されておらず、大阪環状線を経由した関西私鉄間の連絡定期が少なくなっています。(京阪電車は除く)
例えば、発駅がJR西日本のICOCA対応駅の場合、一枚のIC連絡定期にできるのは主に以下の複数路線組み合わせの場合です。
- JR西日本-(乗り換え)-大阪メトロ or 京都市営地下鉄 or 関西大手私鉄
そのほかの連絡定期の組み合わせは表に示します。
発売=二社を直に連絡する経路で発売を意味します。赤文字=間に別会社を挟む3社連絡定期の設定があるところです。
着駅 \ 発駅 | JR 西日本 | 大阪 メトロ | 京都 地下鉄 | 京阪 電車 | 阪急 電車 | 阪神 電車 | 南海 電車 | 近鉄 電車 |
JR西日本 | \ | 発売 | 発売 | 発売 | 発売 | 発売 | 発売 | 発売 |
大阪メトロ | 発売 | \ | 発売 | 発売 | 発売 | 発売 | 発売 | |
京都市営 地下鉄 | 発売 | × | \ | 発売 | 発売 | × | × | 発売 |
京阪電車 | 発売 | 発売 | 発売 | \ | 発売 以下も可 JR経由 メトロ経由 | 発売 以下も可 JR経由 メトロ経由 | 発売 以下も可 JR経由 メトロ経由 | 発売 以下も可 JR経由 メトロ経由 |
阪急電車 | 発売 | 発売 | 発売 | 発売 以下も可 JR経由 メトロ経由 | \ | 発売 | 発売 以下も可 メトロ経由 | × |
阪神電車 | 発売 | 発売 | × | 発売 以下も可 JR経由 メトロ経由 | 発売 | \ | 発売 以下も可 メトロ経由 | 発売 |
南海電車 | 発売 | 発売 | × | 発売 以下も可 JR経由 メトロ経由 | 以下で発売 メトロ経由 | 発売 以下も可 メトロ経由 | \ | 発売 以下も可 メトロ経由 |
近鉄電車 | 発売 | 発売 | 発売 | 発売 以下も可 JR経由 | × | 発売 | 発売 | \ |
大手私鉄のターミナル駅が分散しているとはいえ、JR西日本や大阪メトロを間に挟めば実際に乗り継ぎ乗車は可能です。しかし、意外と連絡定期券に制約があるのがわかると思います。
- 京阪電車を発駅とした場合、JR西日本や大阪メトロを経由して他社私鉄へ乗り継ぐ3社連絡定期を購入できます。
- 逆に、近鉄電車を発駅として京阪電車へ乗り継ぐ場合は、大阪メトロを経由した3社連絡定期は設定されていません。
さらに、近鉄電車-(乗り換え)-JR西日本 or 大阪メトロ-(乗り換え)-阪急電車は、乗り継ぎで繋がりますが、近鉄側からも阪急側からもIC連絡定期券は設定されていません。
ですので、連絡定期+単独定期のように、IC定期を二枚持つことになります。
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