定期券の提示は発着駅だけのため、途中は別経由を使えそうですが、鉄道会社の規定で認められていません。ただし一部に例外的な取り扱いがあり、行き帰りにそれぞれ違う路線が使えます。
原則的な規定と、例外規定を説明します。
定期券発売の原則
定期券は、同じ区間で同じ経由を使い続ける場合のみ、発売されます。
この原則から、ある区間を複数路線で移動できる経路があっても、往復を別経由にする定期券は発売されません。
例えば、国鉄の流れをくむJRの規則や、現存私鉄で最も開業が古い南海電鉄の規則を見てみましょう。
JR東日本の規則
旅客が、次の各号に定めるところにより乗車する場合 (中略) 通勤定期乗車券を発売する。
https://www.jreast.co.jp/ryokaku/02_hen/02_syo/03_setsu/index.html
(1)100キロメートル以内の区間を乗車する場合
(2)区間及び経路を同じくして乗車する場合
南海電鉄の規則
100キロメートル以内の区間を、常時、区間及び経路を同じくして乗車する旅客 (中略) 通勤定期乗車券を発売する。
http://www.nankai.co.jp/library/traffic/kisoku/01_20200401.pdf
鉄道会社の規則の通り、行きと帰りの経路は同じでないといけません。
挙げた規則は通勤定期で書かれていますが、割引率が小さい通勤定期ですら区間・経路の縛りがあるので、より割引がある通学定期はいうまでもなく縛られます。
例外の取り扱い
同じ区間を移動する経路が複数ある鉄道会社の場合、ユーザーの利便性を考えて複数路線を使える取り扱いがあります。
- 指定された別路線も使える定期(事前申告)
- 定期券の経路によらず別ルートも乗れる取り扱い
事前申告の上で指定の別路線も使える定期
首都圏や関西圏のように、別の鉄道会社路線へ乗り入れて同じ目的地に行く路線が複数ある場合は、事前に申告すると指定した別路線も使える定期があります。
東武鉄道
東武東上線の和光市~池袋駅間を使い、池袋駅で東京メトロに乗り換えて都心へ通勤する方は、東武車両が直通運転で乗り入れる、並行他社線の東京メトロ有楽町線、東京メトロ副都心線も使える通勤定期が購入できます。
単なる東上線の通勤定期では他の路線には乗れず、事前に複数経路を使う通勤定期として申告する必要があります。
東武東上線の定期運賃と、東京メトロ路線の定期運賃が両方かかります。
定期1つで2ルート利用 便利な二区間定期 二東流(東武鉄道公式)
西武鉄道
西武池袋線の練馬~池袋間は、西武有楽町線を通じて小竹向原経由で池袋へ繋がる経路もとれ、いずれの路線も使える通勤定期が購入できます。
単なる池袋線の通勤定期、あるいは小竹向原経由の通勤定期ではもう片方の経路には乗れず、事前に複数経路を使う通勤定期を購入する必要があります。
定期運賃は両方の経路の合算ではなく、通常ルートの定期運賃に2,000円程度加算されます。
西武新宿線にも、高田馬場~新宿駅間を西武路線、JR東日本路線の両方を使える通勤定期が設定されています。
京王電鉄
明大前駅より西側の駅から、明大前を分岐点に新宿または新線新宿へいくルートと、井の頭線経由で渋谷へ行くルートの両方が使える二区間の通勤定期が購入できます。
一か月通勤定期の場合、通常ルートの定期代に1,020円を上乗せした運賃になっています。
なお、二区間目のルートでは途中下車ができません。終点駅のみ乗降可能です。
小田急電鉄
代々木上原で乗り換えて東京メトロ線への連絡する通勤定期を使っている方は、少しの追加費用で代々木上原~新宿も乗れる二区間定期も選べます。
プライベートで新宿へ行くことが多い方は、往復回数によっては二区間定期の方が切符よりも得になります。
申告なしで並行しない指定路線・駅も使える定期
平日の通勤客の多くが、鉄道会社の主要商業施設のある終点駅を通らずその前で乗り換えてしまう路線では、定期券の区間外でも終点駅のみで乗り降りできるよう、無料で定期の利用範囲が広げられるケースがあります。
鉄道会社としても、休日に商業施設に買い物客を呼び込めるメリットがあります。
阪神電車
阪神電車の神戸三宮と大阪梅田の間を通しで購入した通勤定期で、阪急電車の神戸三宮と大阪梅田の間を乗車できます。途中下車はできず、もし下車すると無料扱いはなくなり追加運賃がかかります。
また、阪神電車の神戸三宮と新開地の間を通しで購入した通勤定期で、阪急電車の神戸三宮と新開地の間を乗車できます。途中下車・乗車も可能です。
さらに、阪神なんば線に関係する選択乗車サービスとして、九条駅から大物駅の全区間を通る通勤定期を持っていると、大物駅から大阪梅田方面に乗車して梅田駅のみで下車・乗車できます。もし、その途中で下車すると無料扱いはなくなり、追加運賃がかかります。
相鉄
相鉄の新横浜線に関係する選択乗車サービスとして、西谷駅から新横浜駅の全区間を通る通勤定期を持っていると、西谷駅から横浜方面に乗車して横浜駅のみで下車・乗車できます。もし、その途中で下車すると無料扱いはなくなり、追加運賃がかかります。
申告なしで並行する別路線も使える定期
同一鉄道会社だけで路線が縦横無尽に張り巡らされて、ある発駅からある着駅に行く最短ルートが複数ある場合があります。
そのような場合、定期の経由駅によらず、別ルートを使えるサービスが提供されています。
京阪電車
京阪電車の大江橋・なにわ橋、または、淀屋橋・北浜のいずれかの駅を区間に含む定期であれば、並行して走るもう一方の駅でも乗降できます。
つまり、中之島線の大江橋~天満橋と、本線の淀屋橋~天満橋は定期券では同じ路線扱いになります。
ただし、PiTaPa区間指定割引を使っている場合は上記の取り扱いはなく、指定した区間と別の区間に乗車すると、追加運賃がかかります。
東京メトロ
渋谷から永田町・赤坂見附の間は、半蔵門線でも銀座線が並行していますので、定期券の経由駅によらず半蔵門線と銀座線のいずれにも乗車できます。
その他も同様に、並行する路線のいずれに乗車しても良い取り扱いがあります。以下に挙げます。
- 渋谷~永田町・赤坂見附(上述のとおり)
- 国会議事堂前~霞が関~日比谷
- 飯田橋~市ヶ谷
- 四ツ谷~永田町・赤坂見附~国会議事堂前・溜池山王
- 小竹向原~池袋
大阪メトロ
四つ橋線と御堂筋線の梅田・西梅田、淀屋橋・肥後橋、本町、心斎橋・四ツ橋、なんば、大国町を経由する定期を持っている場合、持っている定期によらず両方の路線が使えます。
東急電鉄
東急東横線線と東急新横浜線の日吉~綱島、日吉~新綱島のいずれかの区間を含む定期であれば、近接している綱島・新綱島のどちらでも乗降できます。
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