中学高校古文 定期テスト対策

古文対訳

原文・現代語訳の対比でサクサク読める・わかる

をかしげなる猫 - 更級日記 (菅原孝標女)

 原文と現代語訳の対比図解
花の咲き散る折ごとに、 花が咲き散る時節ごとに、
乳母亡くなりし折ぞかし、 乳母が亡くなった季節だなあ、
とのみあはれなるに同じ折亡くなりたまひし侍従の大納言の御女の手を見つつ、 とばかりしみじみと感慨深い思いで同じ頃にお亡くなりになった侍従の大納言の姫君の筆跡を見ては、

・あはれなり : しみじみと感慨深い(形容動詞ナリ活用)

・たまふ : お…になる(尊敬語/動詞四段活用)

すずろにあはれなるに、 むやみやたらに悲しい気分でいたが、

・すずろなり : むやみやたらに(形容動詞ナリ活用)

五月ばかり、 五月頃、
夜ふくるまで物語を読みて起きゐたれば、 夜が更けるまで物語を読んで起きていると、
来つらむ方も見えぬに、 来ている方向も見えないのに、
猫のいとなごう鳴いたるを、 猫がたいそうのどかな声で鳴いたので、

・いと : たいそう(副詞)

・なごし : 穏やかだ(形容詞ク活用)

おどろきて見れば、 気付いて見ると、

・おどろく : 気付く(動詞四段活用)

いみじうをかしげなる猫あり。 たいへんかわいらしい猫がいる。

・いみじ : はなはだしい(形容詞シク活用)

・をかしげなり : かわいい(形容動詞ナリ活用)

いづくより来つる猫ぞと見るに、 どこから来た猫だろうと見ていると、
姉なる人、 姉が、
「あなかま、 「しっ、静かに、

・あなかま : しっ、静かに

人に聞かすな。 人に尋ねてはだめ。

・きく : 尋ねる(動詞四段活用)

いとをかしげなる猫なり。 とてもかわいらしい猫だ。
飼はむ。」とあるに、 飼いましょう。」と言うと、
いみじう人馴れつつ、 たいへん人懐こくて、
かたはらにうち臥したり。 そばに横たわった。
尋ぬる人やあると、 探しに来る人がいるかもと、
これを隠して飼ふに、 この猫を隠して飼っていたが、
すべて下衆のあたりにも寄らず、 まったく召使たちのあたりには寄りつかないで、

・すべて : まったく(副詞)

つと前にのみありて、 じっと私たちの前にばかりいて、

・つと : じっと(副詞)

物もきたなげなるは、 食べ物も汚らしいものは、
ほかざまに顔を向けて食はず。 よそに顔を向けて食べない。
姉おととの中につとまとはれて、 姉と妹の間にじっとまとわりついて、
をかしがりらうたがるほどに、 おもしろがりかわいがるうちに、

・をかしがる : おもしろがる

・らうたがる : かわいがる

姉のなやむことあるに、 姉が病気をすることがあって、

・なやむ : 病気をする(動詞四段活用)

もの騒がしくて、 落ち着かなくて、
この猫を北面にのみあらせて呼ばねば、 この猫を北側の部屋に置きっぱなしにして呼ばなかったので、
かしかましく鳴きののしれども、 やかましく大声を出して鳴いていたけれども、

・かしかまし : やかましい(形容詞シク活用)

・ののしる : 大声を上げる(動詞四段活用)

なほさるにてこそはと思ひてあるに、 やはりそうなのであろうと思っていたところ、

・なほ : やはり(副詞)

わづらふ姉おどろきて、 病気の姉が目をさまして、

・おどろく : 目を覚ます(動詞四段活用)

「いづら猫は。 「猫はどこに。
こち率て来。」とあるを、 こちらへ連れてきてちょうだい。」というので、
「など。」と問へば、 「どうして。」と尋ねると、

・など : どうして(副詞)

「夢にこの猫のかたはらに来て、 「夢でこの猫が私のそばにやってきて、
『おのれは侍従の大納言の御女のかくなりたるなり。 『私は侍従の大納言の姫君がこのよう(な姿)になったのです。

・かく : このように(副詞)

さるべき縁のいささかありて、 そうなるはずの前世からの縁がほんのわずかにあって、

・さるべし : そうなるはずの

・いささかなり : ほんの少しだ(形容動詞ナリ活用)

この中の君のすずろにあはれと思ひ出でたまへば、 あなたの妹がむやみやたらにしみじみと感慨深く思い出してくださるので、
ただしばしここにあるを、 ほんのしばらくこの家におりますのに、

・ただ : わすかに(副詞)

このごろ下衆の中にありて、 このごろは召使の部屋にいるので、
いみじうわびしきこと。』と言ひて、 たいそう寂しいことです。』と言って、

・わびし : 寂しい(形容詞シク活用)

いみじう泣くさまは、 ひどく泣く様子は、
あてにをかしげなる人と見えて、 上品でかわいらしい人のように見えて、
うちおどろきたれば、 目をさましたら、
この猫の声にてありつるが、 この猫の声であったので、
いみじくあはれなるなり。」  たいそうしみじみと心を打たれたのです。」 
と語りたまふを聞くに、 とおっしゃるのを聞くと、
いみじくあはれなり。 たいそうしみじみとした情趣がある。
その後はこの猫を北面にも出ださず思ひかしづく。 その後はこの猫を北側の部屋にに出さず大切にお世話した。
ただ一人ゐたる所に、 (私が)ただ一人いる所に、
この猫が向かひゐたれば、 この猫が向かい合っていると、
かいなでつつ、 なでながら、
「侍従の大納言の姫君のおはするな。 「(あなたは)侍従の大納言の姫君でいらっしゃるな。

・おはす : いらっしゃる(尊敬語/動詞サ行変格活用)

大納言殿に知らせたてまつらばや。」と言ひかくれば、 大納言様にお知らせ申し上げたいものだ。」と話しかけると、

・たてまつる : 申し上げる(謙譲語/動詞四段活用)

顔をうちまもりつつなごう鳴くも、 顔を見つめながらのどかに鳴くのも、
心のなし、 気のせいか、
目のうちつけに、 ちょっと見たところでは、
例の猫にはあらず、 いつもの猫ではなく、
聞き知り顔にあはれなり。 わかっているような顔でかわいいことだ。

・あはれなり : しみじみとかわいい(形容詞ナリ活用)